世界時計

2014-12-12

第10回、フロートもしくはアイソレーション・タンクについて、その3

 今回はフロートの際に試した実験について思い出してみる。
「意識をなくすように意識を向ける」というのが基本的な方針だった。これは中々難しかったが、そのうちコツをつかんだ。普通の意味のリラックスという目的から、とにかく最初に一度眠るということを心がけていたのだが、中々うまく行かないときがあった。「今日は眠れないな」という意識を持ちながら数分過ごしていると、意識が割合はっきりする時点が再び訪れる。このときに、「さっきは『眠れない』と思いながら実は眠っていたのだ」と気付くことがよくあった。ここは表現が難しいところだが、少なくともあの状態は普通の意味の覚醒状態とは若干違っていた。
 これが数回起きた後で、最初に一度眠ることよりも、この「『眠れない』と思いながら眠っている状態」を目指すようになった。目標地点が定まると達成も容易になる。そして今度は逆のパターンが生じた。「自分は今目覚めている」という意識を持っていたときに、意識をよりはっきりさせようとしたことがある。そのとき、その瞬間までの自分は、「自分は今目覚めている」という内容の夢を見ながら眠っていたようなものだったと気付いた。
 両方とも「起きているつもりだが実は眠っている状態」なのだが、覚醒から睡眠に向かう途中の状態と、その反対の状態と言える。これらをまとめて「覚醒と睡眠の中間状態」と呼ぶことにする。これを体験できた段階で「意識の実験」としては一度満足できた。瞑想とか座禅などは試したことがないが、多分そういうときの意識に近いのではないかと想像している。
 プラス面については、ひょっとしたら集中力が上がったかもしれない。一つの対象を意識する時に、以前よりも没入できるようになった気がする。でもこれは確認するのが非常に困難であり、本当にそうなのかについてはあまり自信がない。
 困ったことについてははっきりしている。フロートの後で日本の食器などを販売するお店に行った時のこと、とても出来のいい木製の製品を見つけた。「これはスプーンというよりもさじと表現するべきだ」と頭で思っていながら、「いい箸だ」と言ってしまった。
 これもフロートから数時間後に起きた話だが、ある友人と会って話しているときに、相手に教えてないはずの事柄をその人が話題にし始めた。なぜそれを知っているのかと尋ねると、「先週会ったときに話したよね」と言われ、確かにそうだったと思い出す。それから数分後にも同じことがあった。
 どうやら言語や記憶の点で異変が起きるようだ。電化製品のスイッチを一度オフにしてから再びオンにした後のスタンバイ・モードのようなものだろうが、自分の脳にそんなことが起きるとは夢にも思わなかった。笑い話として人に話しながらも内心では少し不安になった。取りあえず、フロートの日は何もしないのに限る。(多分私の方法は極端なのでしょう。ごく普通に試すのであれば、フロートはリラックスするのにとてもいいのではないでしょうか。

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