1997年より南ドイツのフライブルク、1999年よりドイツの首都ベルリンに在住。現実と哲学の関係が一つのテーマ。ガイドや通訳業務などでのこぼれ話や、国語についての話なども。大体10日から2週間に1度の更新予定。コメントをくださる方は公開されるまで一日か二日ぐらいかかりますのでお待ちください。各記事の下にあるラベル(例えば哲学、文学、生き方、ドイツの政治経済、観光など)をクリックすると、同じラベルの記事が表示されます。
世界時計
2020-04-20
2020-04-17
第37回、中国から離れつつあるドイツ
何度かポツダム会談以後の世界についての文章をブログに出していますが、今回のパンデミックにより、決定的な進展があったという印象です。できるだけ簡単にまとめようとしたものの、結局長くなりました。私の場合は歴史が専門という訳ではありませんが、ポツダム会談が開催されたツェツィリエンホーフ宮殿でのガイド・ライセンスを持っているため、この問題には特別な関心があります。
昨年はアメリカと中国の貿易戦争がありました。アメリカと肩を並べるほどに中国が経済的に成長できた要因とは、日本とドイツそれぞれとの密接な経済的関係にあったと理解しています。国際政治の面、特に国連に関して言えば、中国の強みはアフリカ諸国との関係にあります。
そして2020年となりました。1月31日にブレグジットが完了し、イギリスがEUから抜けました。そしてその前ぐらいから新型コロナウイルスの深刻さが喧伝されるようになりました。
こういう背景のもとに、日本とドイツは中国とどのような関係を取るのだろうかと眺めてきました。また、ポツダム会談のときには日本に属していた朝鮮半島がどうなるのかについても関心を持ってきました。日本とドイツと韓国は、それぞれ軍事的にはアメリカと同盟関係にあり、経済的には中国との関係を強めてきました。この絡み合いがどうなるのかというのが私の問題意識です。
日本については、4月7日に「生産拠点の国内回帰を後押し」する緊急経済対策についての報道がNHKから出ています(脚注1)。サプライチェーンの脆弱性に対処するため、政府は「中国など特定の国に生産が一極集中している製品や部品について、生産拠点を国内に回帰させたり東南アジアに移転させたりする企業の費用を補助する方針です。」端的に言えば、これは一つの中国離れといっていいのではないかと受け取りました。
そして昨日の4月16日の水曜日に、安倍総理が現状を第三次世界大戦と見なしているという報道が流れました。(「コロナ禍は第3次大戦」、脚注2)
平時ならば中国ビジネス重視の姿勢が続くでしょうが、戦時ならば日米同盟重視になるはずです。これで日本の方針の大枠が定まったと考えています。
次はドイツについてです。ドイツの公共放送局であるARDで午後8時から始まるターゲスシャウ(Tagesschau、デイリーニュースぐらいの意味)というニュースは、多分知名度的にはドイツで一番でしょう。ここのアーカイブを探していたら、二つ面白い記事が活字で見つかりました。個人的には、大体ドイツのメディアというのは、中国を批判せず、ほとんどそのまま中国の発表をドイツ語に直しただけの報道をすることが多いという印象を持っています。これがリアルタイムでくつがえりつつあります。
3月24日付けの「超大国のコロナ・プロパガンダ」(脚注3)という記事は、トランプ大統領が「chinese Virus」と表現したのに対して中国側が反発した件を扱っています。今回の記事には中国もプロバガンダ戦をしているとあり、「中国は批判に対して極度に敏感に反応する」という小見出しまでついています。いつにも似ず、アメリカ側に若干寄り添いました。
3月31日付けの「中国からの数字への疑念」(脚注4)ではさらに踏み込んで中国を批判しています。冒頭にはこうあります。「ここ数日中国は非常に低い新規コロナ感染者数を報告している。しかしこれは疑ってしかるべきである。多くの中国人は嘲笑や皮肉でもって反応し、政府の批評家は嘘の可能性について語っている。」その後に続く文では、中国当局の発表には信ぴょう性がなく大気汚染についても嘘をついていると畳みかけています。
次は4月13日付けのフランスのAFP通信による日本語での報道です。「中国、ドイツにコロナ対策称賛求める? 独報道」(脚注5)という見出しがついています。「ドイツの主要日刊紙ウェルト(Die Welt)は12日、中国の当局者らが政府の新型コロナウイルス流行対策について肯定的な発言を得ようと、独政府関係者らに働き掛けを試みていたと伝えた。ただ中国側は翌13日、この報道を否定した。」このようにフランス最大のAFP通信が中国とドイツ紙の間のスキャンダルを取り上げた訳ですが、中国に対してフランスとドイツがタッグを組むような図式が見えます。
そして昨日の16日、そのウェルト紙が突っ込んだ記事を出しました。「決定的な6日間において中国は致命的な反応をした」(脚注6)という見出しです。少し抜粋してみます。指導層は1月14日の段階でパンデミックの可能性を認識していたにもかかわらず、習近平国家主席が国民に警告したのは20日だった。そして武漢では何万人もの人々の宴会が行われ、数百万人が中国の旧正月のお祝いで移動していた。この内容は日本語の記事ではよく見かけるものですが、このタイミングでウェルト紙がこれを出すということに明確なメッセージが示されていると思います。
もっともドイツの企業が中国に対してかなりの直接投資をしているという事実がある訳ですが、そもそも中国での操業が困難になったらその意味も半減するのではないでしょうか。そうしたらもう、失うものは無いのではないかと推測しています。
日独に加えて韓国でも動きがあり、北朝鮮に近いとされる文在寅大統領側が選挙において圧倒的勝利を収めました。
という訳で、日本とドイツは中国から離れ始め、韓国はこれからさらに中国に接近していく雰囲気です。
こうなると中国の味方は韓国、北朝鮮さらにロシアということになるのかもしれませんが、アフリカについては4月12日のターゲスシャウの冒頭のニュースが「アフリカでのコロナウイルスの蔓延」(脚注7)でした。いくら中国からの金銭的支援があっても、中国発のウイルスでパンデミックになった時に、果たして中国がアフリカ諸国を引き留め続けられるのでしょうか。
ポツダム会談から世界を見るということをしてきましたが、その会談をきっかけにして成立した体制が崩壊するというのは何となく予想していました。しかし場合によっては国連がつぶれるところまで進むのだろうかというのが新しい問題意識となりました。
(2020年4月17日)
脚注1:ttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20200407/k10012371511000.html
脚注2:ttps://www.jiji.com/jc/articlek=2020041600829&g=pol
脚注3、但しドイツ語:ttps://www.tagesschau.de/ausland/corona-usa-china-101.html
脚注4、但しドイツ語:ttps://corona-zuschuss.ibb.de/_layouts/15/ibb.sharepoint.corona/pages/landingPage.aspx?qite=03
脚注5:ttps://www.afpbb.com/articles/-/3278423
脚注6、但しドイツ語:ttps://www.welt.de/politik/ausland/article207290889/Corona-Interne-Dokumente-zeigen-wie-China-im-Schluesselmoment-versagte.html
脚注7、但しドイツ語で、音声が出るので注意してください:https://corona-zuschuss.ibb.de/_layouts/15/ibb.sharepoint.corona/pages/landingPage.aspx?qite=03
昨年はアメリカと中国の貿易戦争がありました。アメリカと肩を並べるほどに中国が経済的に成長できた要因とは、日本とドイツそれぞれとの密接な経済的関係にあったと理解しています。国際政治の面、特に国連に関して言えば、中国の強みはアフリカ諸国との関係にあります。
そして2020年となりました。1月31日にブレグジットが完了し、イギリスがEUから抜けました。そしてその前ぐらいから新型コロナウイルスの深刻さが喧伝されるようになりました。
こういう背景のもとに、日本とドイツは中国とどのような関係を取るのだろうかと眺めてきました。また、ポツダム会談のときには日本に属していた朝鮮半島がどうなるのかについても関心を持ってきました。日本とドイツと韓国は、それぞれ軍事的にはアメリカと同盟関係にあり、経済的には中国との関係を強めてきました。この絡み合いがどうなるのかというのが私の問題意識です。
そして昨日の4月16日の水曜日に、安倍総理が現状を第三次世界大戦と見なしているという報道が流れました。(「コロナ禍は第3次大戦」、脚注2)
平時ならば中国ビジネス重視の姿勢が続くでしょうが、戦時ならば日米同盟重視になるはずです。これで日本の方針の大枠が定まったと考えています。
そして昨日の16日、そのウェルト紙が突っ込んだ記事を出しました。「決定的な6日間において中国は致命的な反応をした」(脚注6)という見出しです。少し抜粋してみます。指導層は1月14日の段階でパンデミックの可能性を認識していたにもかかわらず、習近平国家主席が国民に警告したのは20日だった。そして武漢では何万人もの人々の宴会が行われ、数百万人が中国の旧正月のお祝いで移動していた。この内容は日本語の記事ではよく見かけるものですが、このタイミングでウェルト紙がこれを出すということに明確なメッセージが示されていると思います。
もっともドイツの企業が中国に対してかなりの直接投資をしているという事実がある訳ですが、そもそも中国での操業が困難になったらその意味も半減するのではないでしょうか。そうしたらもう、失うものは無いのではないかと推測しています。
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