世界時計

2020-03-25

第36回、この二週間のベルリンの変化


 この二週間のベルリンの変化は急激でした。折角ですから備忘録を兼ねてここにまとめておきます。ただし、これはあくまでも私にとっての印象に過ぎません。日記のようなものをつけているのでそれを参考にしながら書いていきます。さらに、ベルリンはドイツの中でも例外的な都市であり、特に南ドイツの状況とはかなり異なるはずです。
 
 37日の土曜日。旧西ベルリンの中心地のクーダム通りのスタバに行きました。このとき初めて、持ち込みのタンブラーにコーヒーを注いでもらうサービスが禁止になったと聞きました。もっと前から日本のスタバではそうなっているとの情報をネットで見ていたので、とうとうベルリンもかと思った記憶があります。しかしあの頃は、若干お客さんが減っている感じはしたものの、ウイルスを警戒している雰囲気はほとんどありませんでした。
 それから数日後に普通のパン屋をのぞいたところ、やはり持ち込みの容器でのコーヒーの販売は禁止になっていました。しかしこの頃もまだベルリンの市民生活はほぼ普通で、個人的にはベルリンらしいなと思っていました。堅苦しさというものが無く、アーティストとフリーランスと失業者にとっては最高の雰囲気と言えるでしょう。また外国人も多いです。ウイルスのニュースはあってもベルリンでは気楽な雰囲気がまだ続いていました。
 314日の土曜日。もしくはその前の日だったかもしれません。とにかくその朝にジョギングに出た時に、青空が見えました。実はベルリンもいい町だったなという不思議な感慨で一杯になったことを覚えています。それが何となく不吉な前兆のような気もしました。その土曜日に電車に乗ったところ、ドイツに来て初めて、マスクをしているヨーロッパ人を発見しました。もっとも外見的にはイタリア人のようで、険しい表情をしながらコンパートメントに一人座っていました。ここに逃げてきたのだろうかなどと想像してしまいました。
 315日の日曜日。久しぶりに空港に行ってみたくなり直通バスのTXLに乗り込みました。小走りにバスに近づいていつも通り前のドアから乗車しようとしたところ、何かが書かれたプレートが窓に取り付けてあり、車中からドライバーが私を見ながら後ろを指差していました。そちらの方のドアから中に入って前方を見ると、ドライバーの周囲はテープで封鎖されていました。もちろん感染からの保護のためです。空港に到着すると、数人ではあってもやはりマスクをしたヨーロッパ人がいました。今から思えば、私にとってはこの日がベルリンにおけるコロナ騒動の本格的スタートの日でした。
 316日の月曜日。午前中に近所の行きつけのカフェに行きました。ここは人気店なのでその時間でも五人から十人ぐらいのお客さんがいるはずなのですが、二、三人しかいませんでした。何よりも店のスタッフが途方に暮れた表情をしています。実際にその翌日から閉まりました。
 この週はお店での品揃えの変動が激しかったです。DMというドラッグストアーが近所にありますが、そこではトイレットペーパーが無くなっていました。ところがその同じ日の、そこから約三百メートルの範囲にある同グループの別の店舗では、まだ結構残っていました。あるスーパーでは豚肉が売り切れになっていたので驚いたものの、翌日には逆に大量に残っていました。町全体が急に右往左往し始めました。
 320日の金曜日。大学での用事を済ませて、午後に再びクーダム通りに行ってみました。ヨーロッパ大陸最大といわれるKADEWEというデパートも閉まり、開いているのはドラッグストアとスーパーマーケットぐらいでした。ここは本来ならば人の多い場所で、無理に例えるならば上野ぐらいの込み具合でしょうか(この比較は自信ありません)。ところが、私の目前にあったものは、丁度早朝六時ぐらいの光景でした。つまり、バスも動いていて車もそこそこ走っていますが、通行人はほとんどいませんでした。
 321日の土曜日。私の気持ちの上ではこれがとどめになったのですが、在ドイツ日本国大使館発行のメールが届きました。在留邦人のための注意喚起を目的としたもので、ドイツ政府発表の情報の和訳などが出ています。この日のメールはベルリン州政府による追加的措置についての連絡で、イベント・集会の禁止、他人との物理的距離の確保、飲食店等の閉鎖という三つの項目がありました博物館はもっと前から禁止でしたが、イベントが原則禁止となりレストランとカフェが無くなるということで、ベルリンの魅力が半減してしまいました。(但し、久しぶりにFacebookを確認すると、数か月後のイベントの告知などが結構出ていました。)
 322日の日曜日。試しにもう一度そのスタバに行ってみました。開いていました。もっともテークアウト専門でした。その他としては幾つかのパン屋とケバブ屋はやはりテークアウトの形で営業していました。ドイツは日曜日は原則としてお店が休みになるものの、通常ならば飲食関係は開いています。それが軒並み閉店になったのです。そのままベルリン中央駅に行くと、やはり閑散としていました。このときになってようやくマスクの売れ行きが気になりました。駅構内の薬局では売り切れで、別な店でも売り切れでした。とは言え、いまだにマスクをしている人はほとんど見かけません。注意して観察すると、マフラーで鼻と口を隠そうとする人は増えました。

 これが私の経験した限りでのベルリンの二週間です。あっという間でした。生活に困ることはまだありませんが、残念ながら寂しくなりました。救いとしては、険悪な雰囲気は感じていません。この部分ではまだ暢気なベルリンが残っています。それにベルリンの自然はもちろん相変わらずです。先週からジョギング中にウサギやリスを見かけるようになりました。

 マスク着用によりウイルスの拡散を防ぐ日本に対して、そのオプションを取らないもしくは取れないドイツは、街中の人口を減らすしか手が無いのだろうと推測しています。有効なワクチンが無くそもそもこのウイルスの素性がはっきりしない現時点では、こうするしかないのでしょう。

 先日の大使館発行のメールから引用すると、「個人によるスポーツ,屋外での新鮮な空気を吸うための運動」のための外出はまだ認められています。私自身は2メートル以上他人と距離を取りながらジョギングを続けていますが、しっかり情報をチェックして適切な行動を取ることが必須です。場合によっては家でのみ運動することになるかもしれませんが、とにかく体を鍛えて気分転換をして良質の睡眠を確保するというのが現時点でのベストではないかと考えています。

2020-03-16

第35回、ブログの再開

 2018年ですからもう一昨年のことになります。秋に二つの経済同友会の仕事が入り、通訳とガイドの両方で受けました。それぞれの機会に、ブログはもう更新しないのかとのご質問を頂きました。実に痛いところをつかれてしまいましたが、いいえ復活させますと答えました。あれから一年半も経過してしまいました。

 福岡経済同友会からは昨年の春先に視察報告書を頂きました。中には私について触れてある文面も見つかり、ああよかったという気持ちになりました。ところがこの追い風に乗ることができず、ブログを更新できませんでした。
 もう一つの広島経済同友会については、昨年の秋にこの辺の事情を知る友人とベルリンで会う機会がありました。その時の報告書はネット上で閲覧できると聞き、早速拝見いたしました。私の名前まで書いてくださる方がいらっしゃったのですが、ブログが更新されていないのが残念だという一文が目に留まりました。電車の中で見知らぬドイツ人が周囲にいる状況にも関わらず、思わず「うわぁ」と声を出すところでした。
 それから何度かの挫折を経て、久方ぶりに更新してみました。

 最近のベルリンですが、例のウイルスの影響が出始めています。もっともこのことについてのデータを書いていくのは止めておきます。このブログはタイトルにもあるように、あくまでも私が個人的に考えていることを出すのがメインです。事実確認ではなくそれについての考えに絞るということです。
 昨年の夏前にドイツのアディダス社に関する通訳業務を受けました。会社の沿革や顧客戦略の話などは当然出てきます。すると何となく親しみがわき、そして私もビギナーレベルでその顧客戦略に乗ってみることにしました。二月上旬ぐらいにそこのショップでシューズやウェアを一式揃え、アプリをスマホにダウンロードし、ジョギングやウォーキングなどを始めました。ベルリンの地図をご覧いただくとお分かりいただけるでしょうが、こういうことに適した場所がたくさんあるのです。一番いいシューズを買いました。かかとに重心を乗せるときの感触が実に心地いいです。セットしたアプリの「アクティビティ・スタート」の掛け声とともに走り始めると、一キロごとに消費カロリーやスピードなどを報告してくれます。まあ好みの問題になるでしょうが、私にはこれがとても効果的で、もう一キロ走ってみようかという気になるのです。最後に航空写真を用いた私の走行ルートが表示されます。無料のアプリでここまで出来ることに感激しています。ものを習うときに模範生になるといいことあるように、模範的な顧客になってみたということなのですが、今のところは二十日間近く継続しています。
 ここ数年はスマートファクタリー、スマートシティのように「スマート」という言葉のつく分野の仕事が多かったのですが、スマートウォッチには何となく手が出ませんでした。ところが上記のアプリに味を占め、これも買いました。fitbitversa2という機種です。各種運動についての記録、睡眠の量と質の計測、カロリー計算などさまざまな機能があり、ダイエットに対するモチベーションが一気に上がりました。睡眠についてはここ数年その質の悪さが気になっていました。このデバイスは心拍数から睡眠を分析するためか詳細なデータを出してくれます。これを参考にした結果、深い眠りを得るためのコツがわかってきました。私の睡眠パターンは最初の四時間に一時間以上の深い睡眠があればまずまず上出来で、そのあとにもう一度それが来ればなお素晴らしいという感じです。これを如何に達成するかという問題意識を持ちながら寝ています。こう書くと寝ているのか考えているのかがややこしいですが、とにかく順調です。
 取りあえず現状では、論文と語学とフィットネスに専念しています。周囲の混乱に振り回されても仕方ないです。
 多分不定期でしょうが、前よりは気楽にポツポツと出していきます。この間に励ましの言葉をかけてくださった方々、どうもありがとうございました。
325日の追記。会社名、商品名などを補足し、それに従って一部を変えました。また、316日に投稿した後で状況が変わり、それについては第36回の投稿にまとめました。現時点でのベルリンは個人によるスポーツは認められています。しかしジョギングをしている人はそんなに多くはない印象です。)